DX SEMINAR / 2021 . 05 . 26
海外YouTuberがスカイプCEOに扮するジョーク動画が拡散 本物と勘違いする人々 スカイプの思い出を振り返る人々
4月19日、ある日本人Twitterユーザーが「スカイプのCEO、チャーミングすぎんだろ」と一文を添えた動画ツイートを投稿。動画の内容は『スカイプのCEOのランドン』を名乗る男性が、ビデオ通話ツール『Zoom』の流行に対する怒りを喚き散らすというもの。
放送禁止用語を交えた過激でコミカルな言い回しがウケたこのツイートは、5万回以上もリツイートされ、Twitterのトレンドワード一覧には一時「Skype」の文字が踊りました。
■話題のスカイプCEOは偽物 YouTuberによるジョーク動画
年のために申しあげておくと、この『スカイプのCEO』はまったくの偽物。
件の動画の初出は3月18日、米ロサンゼルスに拠点を置くインターネットコメディ会社『CollegeHumor』が制作し、同社のYouTubeチャンネルに投稿されたもの。
約1ヶ月後の4月16日に、『U and The World』というYouTubeチャンネルが、この動画に日本語字幕を加えたものを『SkypeのCEOがZoomにブチ切れ!』と題して投稿。
さらに3日後の4月19日、『U and The World』による日本語訳を見た先述の日本人Twitterユーザーが、本物のCEOメッセージと勘違いして動画をツイート。以降、動画を見た多くのTwitterユーザーが勘違いしたままでツイートを拡散。拡散した中には数万フォロワーを抱える、いわゆるインフルエンサーも複数含まれていました。
そして4月21日に当該のツイートは削除。ツイートしたユーザーは「誤った情報のため、削除いたしました」とした上で謝罪しています。
いやはやデマや間違えた情報が広がる勢いというのは本当に凄まじい。人間は「本当のこと」より「こうだったら良いな」と思うものを信じがちな生き物。今回も「スカイプのCEOが本当にこんなことを言っていたら面白いな」という思いが、勘違いしたままでの拡散を呼びました。
この記事をお読みの皆様もぜひ、SNSで情報を拡散する際にはワンクッション置いて、情報の真偽を確認するようにしてくださいね……。
■強烈に皮肉られるスカイプの現状
拡散した経緯はともかく、動画の内容はコメディと分かっていても非常に楽しいものです。
『スカイプのNEO』を演じる男性は、動画が始まると新型コロナウイルスの感染拡大に触れ、リモートワークを支えるビデオ通話ツールについては「社会の生命線であると言ってもいいでしょう」と重要性を強調。その上で視聴者に対し「心の底からお伝えしたいことがあります」と切り出します。
そんな前置きの後で男性が発したのは、……まさかの『Fワード』。さらに「お前のZoomアカウントもろとも消え失せろ!」「Zoomって何? まじで何? 俺らがどんだけ長いこと、この世界にいると思ってんだ!」「Zoomに出来て俺らに出来ないことって何?」など、Zoomに対する恨み節を羅列していきます。
スカイプは2003年にベータ版が公開。2004年の正式版リリースを経て、2006年にビデオチャットが実装。以降、ビデオ通話ツールの先駆け的存在として、世界中で利用されてきました。
ですが近年はZoomを筆頭に、後発のビデオ通話サービスが相次いで台頭し、現在スカイプを提供しているマイクロソフトでさえ『Teams』という新たなビデオ通話ツールを公開。すっかり「過去のサービス」に成り果ててしまったスカイプは、コロナ禍によりビデオ通話ツールの需要が高まっても、その名前を目にすることがほとんどありません。
今回広く視聴されたコメディ動画は、そんなスカイプの現状を皮肉ったものだったのでした。
■スカイプの思い出を振り返る人々
さて、発端が間違った情報の拡散であったにせよ、今回の出来事で数年ぶりともいえる規模の注目を浴びたスカイプ。かつてのユーザーを呼び戻すのは難しいかもしれませんが、一連の騒動を見た人々からは、かつてスカイプを利用した日々を懐かしむ声がちらほらと聞こえてきます。そのうちのいくつかをご紹介しましょう。
“実家ぐらしだった大学生時代、家族が寝静まったあとで毎晩、毛布にくるまって当時好きだった人とスカイプをしていました”
“同じバンドのファンと、Twitterで知り合ってスカイプで交流していました。新曲が出たときや、メンバーがやっているラジオの時間などは、みんなでスカイプを繋いで、ああだこうだと言い合うのが楽しみでした”
“関西の友人とスカイプでやり取りする中で、言葉や文化の違いに気付きました。関西弁の先生方や友だちの喋る様子を聞いて「うわ~本当に繋がってるんだな~」と不思議に感じた記憶があります”
“オンラインゲームで仲良くなった相手と、通話しながらプレイしていました”
“海外で暮らしていたころは、スカイプで家族とつながることができました”
“語学力向上のため、スカイプミーを使って世界中の変態と会話していました(スカイプミーとは、すべてのスカイプユーザーからチャットや通話を受け付ける機能ですが、現在は削除しています。世界中の人々と会話できる反面、いかがわしいメッセージが送られてきたり、犯罪の温床になったりという側面もありました)”
■スカイプ復権の日は……来るのか?
コロナ禍を経て広く普及したリモートワーク。Zoomをはじめとするビデオ通話ツールは、その屋台骨を支える存在といっても過言ではありません。
そんな中、今やすっかり競合の陰に隠れてしまったスカイプですが、かつては確かに一時代を築き、ビデオ通話ツールの進歩を支えた日々がありました。
今後ふたたび復権する日が来るかは分かりませんが……。来ないんじゃないかなとは思いますが……。皆さんもこの機会に、スカイプとの思い出を振り返ってみてはいかがでしょうか。